
インスピレーションは、実はちょっと隠しておきたい節があった。何だかその方がかっこいいし、「あぁ、あれは朝起きたらふと思いついて、10分ぐらいで完成させたんですよ」とか言いたい。天才感がもの凄くあるじゃないか。そしてインスピレーションはしっかり隠して置いて、言うとしても「公園で木を眺めていたら…」とか、「ドアノブを見てふと…」とか狙いたい。めっちゃ天才っぽい。
まぁ実際、そんなことは到底無理である。そんなパッと降りてこない。実際のところ、ふつふつと面白そうなものを集めておいて、それを温めて形にして、今までのデザインやコンセプトになっている。つまり、今までのプロダクトではこのブランド発足前からなんとなく温めていたアイディアを出していた。
だが今回の新作は、少し違う。このTシャツのインスピレーションを既にしっかり明かしてしまっているのだ。このブランドを進めながら沸いた、初めての0から1になったアイディアである。実質的な一作目のプロダクトと言えるかも知れない。このブランドがなかったら、生まれていなかったと思うと不思議だ。
実質一作目という理由は、もう一つある。それは今までのプロダクトの反省を受けて制作した初めての作品だからだ。
全てにおいて、「モノ」だけにお金を払うのではなく、QRコードや、生活に根付いたメッセージ、それらをしっかりと打ち出して「体験」も提供していきたい姿勢は今も変わらない。でも、今まではこちらから投げかけるばかりで、買ってくれたお客様が「参加」するスペースがないように感じた。もちろんプロダクトがお客様の生活や考えの一部に少しでもなれたら最高だけど、お客様の「参加」で完成するものを作る必要があると感じていた。その反省点を、しっかり活かしたかった。
そこで考えついたのが、今回のQRコードでスキャンできるインスタグラムのフィルターだった。これなら、実際にお客様が日常の驚きを探すことができる。写真に撮るかどうかは別にしても、携帯の画面が目の前の世界を映すことによって、少なからず気持ちも外に向くと思う。
それから、今回は念願のスクリーンプリントを使用した。今まではデジタルプリントを使用していたので、微妙な色のニュアンスなども気にせずデザインしていた。それはそれで味になるのだが、プリントの色落ちが避けられないのが難点だった。だが今回は色の数を一色に絞り、たくさんの洗濯に耐えられる、インクをべったりと使ったスクリーンプリントだ。一色でシンプルなデザインの為、ポップで直球な印象になった。着る人を選ばないデザインでありながら、QRコードでギミックを効かせられたと思う。

とまぁ、ここまでひたすら真面目に紹介したのは、ただ商品のことを伝えたかったからだけではない。インスピレーションでかっこつけられないのが、未だに悔しいからである。天才と思われたい。めっちゃモテたい。