Mass-Producing Niceness~まだ言えないお礼の代わりに

Mass-Producing Niceness~まだ言えないお礼の代わりに

最後に他人と言葉を交わして、良いきもちになったのはいつだろう。

昨日、使っているスケートボードのデザインを信号待ちで誉められた時かな。大きな犬(犬種にはほんとうに疎い)と一緒の、目が覚めるような青いジャケットを着たお姉さんだった。疲れていたその時の何気ない一言って、思った以上に身体を軽くしてくれる。

私たちはほぼ毎日、見知らぬ誰かと思った以上に接している。見知らぬから意識しないだけであって、スーパーで買い物をしたり、バスに乗ったり、ドアを開けたりしている間に周りの人と少なからずコミュニケーションをとっている。ネットショッピングで買ったものを届けてくれるのも、また見知らぬ誰かである。

もちろん、疲れることだって多い。ロスの人たちは良くも悪くも自分を大切にしているので、細い道のど真ん中でも立ち話をして道をしっかり塞ぐし、どでかいスピーカーでJanet Jacksonをかけながら電車に乗る。周りの人がJanetを聴きたいかどうかは、問題ではないらしい。そんな人たちを目にすると怒りを通り越して疲れてしまう。その思考回路が理解出来ないし、店員さんにお礼を言わないでコーヒーを受け取る姿、その視野の狭さにどっと身体を重くさせられる。

そんな中だからこそ、ふと訪れる「Niceness」にやられてしまう。もうすっかり泣きそうになってしまう。目を見て「ありがとう」と言ってくれる人、デザートをサービスしてくれるカフェの人、靴を褒めてくれる人。できることなら彼ら皆に力強い握手で「ありがとう!あなたがいるから世界を嫌いにならずにいられます!」と言いたい。いや、いつか言う。旅行とかで行った見知らぬ土地で、気が大きくなった時を見計らって、ばしっと言いたい。

大量生産されるレジ袋やTシャツ、プロダクトそのものが人の厚意、親切さ、「Niceness」だったらいいのに。どうせ大量生産するなら、親切な気持ちがいいよね。そう思ったことが今回のプロジェクトの始まりだった。

まず自分の周りにあった大量生産品を見つけてみて、そのデザインやプロダクトからポジティブな一言を考えた。”Spread Goods”は直球のメッセージだけれど、企業ロゴをサンプリングすることでポップに、クスッとできるぐらい説教じみることなく伝えられたのでは、と思っている。

“YUP” Tシャツは、内側にあるタグを外側にプリントしてひねりを効かせた。でも書いてあるデザインはほとんど駄洒落であるのが嫌味っぽくない理由だと思う。「100%コットン」より、「100%信頼」の方が絶対いいもん。めっちゃ信じてくれてるもん。

”Be Well” CDプレートは、外にメッセージを発信していた前述の2作と違って、内向きなセルフケアをリマインドしているもの。CDデザインはインパクトが大きいから、インテリアのアクセントになるしね。元ネタのロゴ書体そのままでしれっと書いてある、”Be Well”の文字に気付く人がどれだけいるのかは謎だけども。使う人が分かっていればそれいいよね。子供の頃の、親友との秘密の暗号みたいでクスッとしてしまうし、くだらないけど、元気にはなる。

まだ街のいい人たちに直接お礼を言うことはできないけれど、彼らを見習って少しでも誰かに親切になれたらいいな。毎日は厳しいかも知れないし、忘れちゃうこともあるだろう。でもそんな時にこれらを身につけていたら、せめて見知らぬ誰かにクスッとしてもらえると思う。それだけでも、絶対違うと思うんだ。

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