Before Pop Up
ひとことで言うなら、あまり実感がない。
今回8月20日から、初めてのポップアップストアを行う。約二ヶ月ほど前から少しずつ準備を進め、あとは当日を迎えるだけである。そもそも今年の目標の一つだったこれをしっかり実行出来そうで、まずはホッとしている。ポストイットにこれを書いた時は、あんなに現実味がなかったのに。あと一週間やそこらで人前で今までの商品を並べて売ることに驚きを隠せない。

そもそもなぜ、ポップアップをしようと思ったか。理由は2つある。
一つ目の理由は、日本に帰った時に「ロサンゼルスでポップアップをやった」という自信が欲しかったからだ。少し難しそうなことぐらいが、後々の自分にとってありがたいだろうし。これから何をチャレンジするとしても、この称号はきっと自分を助けてくれると信じている。でも言ってしまえば、やってしまいさえすれば獲得できる称号でもある。それはどんなクオリティーでも結果でも、やりさえすればいいのだ。そう思うことで今までの商品を再オーダーできた(思ったより高かった)し、臆病になる自分を引っ込めることが出来た。とにかく納得する形で、やりさえすればいい。呪文のようにそれを唱えて、実行に向けてひたすらにベンダーをデザインし、それを置く場所を見つけて、考えたフライヤーをオーダーし、それらをよく行くお店に配って回った。「全く売れなかったらどうしよう」「道行く人達からガン無視されたらどうしよう」そんな不安を、力いっぱい拭って半ば無理矢理でも準備を続けた。もう商品はある以上、やるしかない。



二つ目の理由がわかったのは、つい昨日のことだった。「実行すること」にあまりに囚われすぎて、実行してからの、「その最中」には全く目的が見出せていなかったのだ。当日のことで想定していたのは、前述の通りネガティブなことばかり。進んでいく準備とは反比例するように、募るのはストレスと不安。もうあの時のワクワクは思い出せなくなっていた。段々とストレスに耐えられなくなって、日本の友人に連絡をする。何のためにやっているのか、見失ってきていたから。友人はとにかく自分のことを褒めてくれた。ここまで準備したことや、今までの商品のこと。褒められて、やっと凝りがほぐれていった気がした。自分の固い結び目を、友人は思いもしない方向に引っ張って、しゅるしゅると解いていったのだ。そもそも、これはお金儲けのために始めたのか。違ったはずだ。では、売れることが目的ではない。楽しいから作り始めたんだった。では今、楽しくなることをしないでどうする。やっと身動きがとれるようになった。

これは、出会って、伝えて、繋がるためだ。
これからきっと、思いもよらない出会いがあるだろう。突然目の前に現れるTシャツに興味を持ってくれる人が一人でもいるなら、その人のことを大切にしたい。その人が、一体何に惹かれて足を止めたのか知りたい。そしてその人に、どんな思いでデザインをして、コンセプトを作ったかを知って欲しい。万が一買ってもらわなくても、それはそれでいい。もしその人が面白いと思ってくれたら、後で思い出してくれたら、それでいい。本気でいいと思って作ったものに共感してもらって、お金を出して買ってもらえたら、きっと物凄く嬉しいに違いない。それがたった今会った人だったら、その喜びは一体僕をどうしてしまうんだろう!そうして「いいね!」と言ってくれた人を、どれだけ大切に思うんだろう。この感情全てを知りたい。体験したい。
これらは全て、自分の「好き」の上に成り立っている。ひたすら我がままに、好きなようにやらなければ崩れてしまう。だから、好きなようにやろうと思う。今は、楽しみで仕方がない。