After Pop Up




11日間のポップアップが終わった。終わらないかと思った。2週間経ってようやく、冷静にコラムを書ける気がする。そのぐらいとても濃密な夏の最後の11日間だった。
きっと一生、初めてTシャツを買ってくれたお父さんと、小さな息子さんの姿を忘れることはないだろう。興味深々で、ゆっくり歩み寄ってきてくれたお父さんと、恥ずかしそうについてくる男の子。じっくり商品の説明を聞いてくれて、電子決済をしたいけど携帯の調子が悪いからと言って、わざわざ向かいのカフェまで行ってそのWi-Fiを使ってお買い上げいただいた。
その後の子犬を連れたカップル、めちゃくちゃ綺麗な二度見&急旋回UターンでTシャツを買ってくれたおじさん、毎朝見かけるうちに気になって、声をかけてコーヒーまで買ってくれた人。一人ひとりのことを思い出すと、鼻の奥がつんとする。みんな違った職業、ルーツ、人種、文化。共通していたのは、たまたまポップアップの前で足を止めてくれたことと、このブランドのものを気に入ってくれたこと。それだけで繋がってしまうなんて、奇跡と呼べるんじゃないだろうか。
LAの喧騒にすっかり疲れてしまって、心を閉ざし自己防衛をしていたんだなと気がついた。想像以上にあたたかい人達に「大丈夫だよ」と言われている気がして、Tシャツを売ることしかできないのが何だか申し訳なくなりすらもした。自分の考えたデザインやコンセプトを一生懸命聞いてくれて、笑顔になってくれて、それにお金を払ってくれる。毎回、そんな事実が信じられなかった。だって理解しようと思って作っていた訳ではなかったし、とにかく自分が作りたいものを作っていたから。そんなものは理解されないだろうと思っていたけど、まさか売れるなんて。自分の大好きな映画を、今知り合った人も偶然大好きだったような衝撃。そして感動。この人にこの感覚が伝わるなら、きっと信頼できる。そんな出会いに溢れていた。そしてその信頼は、これから先の新しい機会も呼び込んでくれた。
「私もこういうのやってみたいけど、怖いの。」そう言う女の子の背中を本気で押せたのは、あの時ほんとうに怖がってた自分がいたから。「絶対やった方がいいよ。怖さの何倍も幸せになれるから。」
「お金があったら、全部買いたかったよ。素敵だから、続けるんだよ。」ホームレスのおじさんは、なけなしの小銭と一緒にそう言ってくれた。心からのお礼と、少しのプレゼントを渡せたあの時の感動を、超えるものがこの世にあるのか。
朝早くや忙しい合間を縫って駆けつけてきてくれた友達に、どれだけ安心させられたか。彼らの顔を見ると、毎回しゅるしゅると力が抜けていった。そこから一気にやる気がお腹の底から突き上がってくる。もっと何かを見せたい。応援してくれる友達と、出会えた信頼できる人達のために。
自分はなんてラッキーなんだろう。怖がっていた時の自分に、今の自分を見せたい。世界が味方しているようにすら思えてしまった。そして優しいみんなに生かされているなと実感した。せめてその間は、自分の全力で表現していこうと強く思った。続けることが恩返しだよね。